絵描きが紹介!ゴーストペインター映画『ビッグ・アイズ』マーガレットキーンについて

今回の動画は今更〜な感じですが、昨年の話題映画『BIG・EYES ビッグアイズ』のご紹介! 映画紹介って意外に難しく、まだまだ修行が足りませんが、ビッグアイズの魅力が少しでも伝われば嬉しいです(^^) 動画では軽く紹介しましたがblogでは映画のあらすじや、私の見解もあり、今回もかなり長文です。(ネタバレ注意です)

ティムバートン監督が実話を映画にした話題作! 60年代にモダンアートの世界でブームとなり、その後全米を騒がせるスキャンダルにまでなった夫婦の実話。。。☆ 主人公のマーガレットキーンも、もちろん実在の人物です。 私が初めてマーガレットの絵に出会ったのは母が経営するパーラーの古びたポスター。 それが、全米で大流行した、アメリカのモダンアート、更にはポップアートの世界の巨匠の作品で、主に子どもを描く画家だと知った事、昔アメリカでゴーストペインターなる人が居た事を知ったのはこの業界に入ってから。。。 これって映画みたいな話だわ〜って思ってたらホントに映画になってしまった。。。 少なからず影響を受けた画家さんの実話を大好きなティムバートン監督が映画にした事を知った時には、どんな仕上がりになったのか気になって仕方ありませんでした。。 ココアートチャンネルを始めてから、この映画と『ハーブ&ドロシー』だけは絶対紹介しようと決めていました。 ここからは動画では言えなかった、映画のあらすじと、見どころも書きますので、完全にネタバレです。 映画のネタバレはもちろん、マーガレット キーンの作品の事、同じ絵描きから見たマーガレット自身の事に付いて、アートの世界の事についても私の見解を書きたいと思います。
 多少毒を吐きますが、根底に大先輩への愛がある事日本のアート界が今より少しでも良くなってほしい気持ちがある事を理解して頂ければ幸いです。。。(^ ^)
 映画の内容を知りたくない皆様、DVDを観てからの方が良い方は動画だけをご覧頂ければと思います。。。

1958年カルフォルニア。。。

内向的で口下手で、子どもの頃から絵を描くのが好きなマーガレットキーン。。。

誰かと話す事より絵を描く事でコミニュケーションをして来たと言っても過言ではないほど穏やかで物静かな性格の女性。。

最初の旦那様と離婚後シングルマザーとなったマーガレットは一人娘を連れ、絵で生計を立てようとサンフランシスコのノースビーチで似顔絵を描きをしながら画家人生をスタートさせました。。。

似顔絵を描いていた時にパリの名門美術学校を卒業したという(自称風景画家)のウォルター・キーンと出会い再婚する。

(多分全部嘘。風景画も多分自分で描いていない。)

 不本意にもゴーストペインターにされた女性が主役の映画ですが、視点を変えれば、不動産で成功したものの、絵は全く描けないのにアーティストへの憧れだけは捨てる事が出来なかった同情すべき男の話でもあるかもしれません。。。

描く事より画家という職業、華やかな部分だけへの憧れが強いウォルターは、最初は夫婦2人の作品を画廊に売り込むのですが、有名ナイトクラブでの展示を思いつき、その時クラブオーナーと摑み合いの喧嘩に!

トラブルを起こした所をゴシップ記事の一面に掲載され、背後に写っていた絵が人々の間で徐々に話題になり始めます。

自分の描く絵よりマーガレットの描く大きな瞳の子どもの絵が人気が出ると悟り、マーガレットの作品を自分が描いたことにして、苗字の「キーン」のサインを入れ売り出します。

瞬く間に絵は売れ、著名人、有名人がコレクターになった事で更に人気はうなぎのぼり。。。

外交的で口が達者で、類い稀な営業センスに長けていたウォルターは、テレビやマスコミにも積極的に出演し、デタラメなステイトメントやコンセプトで嘘の感動を塗り重ね人々を騙すのです。

 嘘に気が付いたマーガレットも「絵は私の分身だから」とウォルターに訴えますが、取り合ってもらえません。

オリジナル作品の値段もどんどん上がり、購入できない人が続出、ウォルターは複製画を思いつき、画廊だけではなく、量販店やスーパーでもポスターやポストカードを販売、プリントの複製画が売れると原画の希少価値は更には上がり、作品は全米で知らない人はいないくらいの人気に!

二人は経済的にどんどん豊かになりました。

当時、絵画を複製画にして売る商法は珍しく、今で言うエスタンプやジークレー版画の先駆けだったと思います。

驚くほどの巨万の富を得、豪邸に住みセレブの仲間入りをして、毎日毎晩有名人たちと豪遊を繰り返すウォルター。

実際はあんなに遊び暮らして、いつ絵を描いていたのかと、不審に思った関係者もいたようです。。。

一方狭い部屋に、ほぼ監禁状態で絵を描き続けるマーガレット。

まだまだアメリカも男尊女卑な時代、そのままデビューして、女性画家がまともに表舞台には出られない時代でもあり、もし、ゴーストペインターでなければ、認められなかったのかしら、と思うと少々複雑な気持ちになります。

日本では、未だに女流画家という言葉が普通に使われる美術の世界。。。

マイノリティの私を人間だとも思ってくれない関係者が驚くほどいるのです。

この際だから今の私の現状をもう少し暴露すると。。。

決まりかけていた東京での個展が、私のセクシャリティを知った途端、あからさまに取り引き中止になってしまう。。

担当者が持っていたのが20代の頃の私のプロフィールや写真等の資料だったのには唖然としました。

何故、依頼する前に作家の事をちゃんと調べないのかしら。。。

人権侵害や差別ではありませんので、口外するなと言われ、念書まで書かされたのでデパート名も仲介画廊の名前も言えませんが、念書にサインをする時の悔しさは多分一生忘れる事はなく、私の糧になると思います。

そんな所ばかりではない事も知っているけど、ホントブラックで魑魅魍魎な業界だと痛感。。。

いつの日か、性別によって能力や魅力や才能が決められない業界に、多様性を認められる成熟した業界になってくれる事を願っています。

すみません話が逸れました。。。

 時代は違うけど、そんな今の自分と重なり、違う視点で泣けて来る映画でもあります。

薄々気付いてる娘に嘘を付き続ける事に、マーガレットは限界になっていて、フラストレーションが溜まっていきます。

豪遊を重ねながらも、評論家からは「目が寂しくて不気味な絵だ!」「こんな悪趣味な作品はアートではない」等、思うような評価を得る事が出来ず、毎日イライラするウォルターは、正にDV夫になっていきます。

娘と自分の身の危険を感じたマーガレットはとうとう離婚を決意。

娘を連れてハワイで新しい生活をはじめた。

別居後も、離婚の承諾を約束にゴーストペインターを続けさせられるマーガレット。

映画の細かい部分が本当なら、大先輩に失礼を承知で言わせて頂くと、母親として、娘の事を考えてもっとしっかりして!とイライラハラハラする場面も多々ありますが、娘との絆には感動しました。

ハラハラドキドキ、ドライアイに注意な映画ですww

騙されやすい部分に関しては私も人の事は言えませんが、マーガレットの男を見る目とか、男運に付いても考えてしまう場面もあります。

ウォルターの娘への愛情は全く感じられない。。もっと言えば、マーガレットに対しても最初から愛情があったのかしら。。。と疑問です。

なんと、ウォルターは離婚後も、作品の権利は自分にあると主張し、権利収入を自分の物にしようとします。

心が弱っていたのか、某宗教家の言葉に勇気付けられ、地元ラジオ局で、「ビッグアイズを描いていたのは自分だ」と、ゴーストペインターであった事を暴露します。

子どもを描く画家だし、母親として、娘を守る為にもっと早く暴露出来たのでは?と思うのは私だけ。。。?

既に画家として有名人になっていたウォルターは、あろう事か作品の権利を主張し告訴したのです。

ここに来てウォルターは頭が良いのか悪いのかわからなくなってきました。

弁護士なんて必要ない!と、自分で自分を弁護します。喋りまくり、まくし立て陪審員を丸め込もうと、都合良く、嘘を付きまくるウォルターはホント最低の人間です。

男の魅力が1ミリも感じられません。

両者一歩も譲らずな感じで、裁判はもつれにもつれ、裁判長は異例の判断をします。

裁判の最中にその場で、陪審員や観衆の目の前でビッグアイズを描くよう命じたのです。

「今この場で描きなさい」と。。。

今日は腕が痛いから無理とか、理屈を並べ描かないウォルターに対し、生き生きとキャンバスに子どもの顔の絵をサラサラと描くマーガレット。。

一目瞭然、あっけなくウォルターは敗れ去ります。

 誰もが安易に想像出来る、この結果を想像さえ出来ず、勝てる気が満々で、まくし立てたウォルターの貧困な想像力。。

そんな想像力の乏しさからも、やはりウォルターにはアーティストとしての才能は0に等しかったと思います。

改めて凄いのが、これが全て実話だという事。。。

人間やアートの世界の黒い部分もちゃんと表現しながら、実話なのにドキュメンタリー風ではなく、ちゃんと世界観を表現出来ているのは、さすが元ディズニーのアニメーターだったティムバートンの為せる技なのかもしれません。

とにかく色合いでの場面表現が素晴らしいです。

60年代のお洋服も観ていて楽しい。

マーガレット・キーン役の(エイミー・アダムス)とウォルター・キーン役の(クリストフ・ヴァルツ)の鬼気迫る演技力に引き込まれっぱなしの私でした。

勝訴したマーガレットは400万ドルを勝ち取り、三度目の旦那様にも恵まれ、お元気で今も画家活動を続けておられます。

ティムバートン監督が以前から、マーガレットの描く子どもの瞳の大ファンであり、マーガレットの作品を多数所有する大コレクターだった事から、この映画は生まれたそうです。

ティムバートン本人も「僕の作品はマーガレットの影響を受けている」等と公言しています。

ポップアートの巨匠 アンディ・ウォーホルも「マーガレットキーンの作品はどれも素晴らしい。もし作品が良くなければなければ、これほど多くの人々の心を射止めていないだろう。」と絶賛しています!

今も、モダンアートやポップアートの世界から注目され続ける巨匠アーティストです。

私の作品のコレクター様の中にもマーガレットの現物を所有されている方が数人いらっしゃいます。

私も原画を拝見させて頂いた事があるのですが、日本をモチーフにした作品も多数描いています。

少なからず影響を受けている、尊敬する大先輩の作品と自分の作品が同じコレクター様の元に所蔵されている事は、私の何よりの励みでもあります。

そしてこの映画は、アートの価値とは、作品の評価とは?についても考えさせられる映画だと思います。

あの最悪のウォルターと出会ってなければ、今の画家としてのマーガレットは存在しただろうか。。。なんて皮肉めいた事を考えてしまう。

どんなに才能があっても、どんなに良い絵でも、売り出してくれるの人がいないと埋もれてしまうのがアートの世界。。

特に日本では、学歴や受賞歴が最も重要とされる国かもしれません。

現に、この映画が公開される前にマーガレットキーンの名前を出しても、ほとんどのアート関係者がその名前を知らなかったのに、今やマーガレットの名前を知らない日本のアート関係者はいないし、オリジナル作品は日本では手に入らないくらい。。。

どこまでもミーハーな日本のアート関係者が少々情けない。。。

結局、本当に観る目があるのは、絵に込められた思いを読み取れるのは、曇った色眼鏡を掛けている美術関係者ではないのかもしれません。

日本のアートの世界も、観てくださる人を、興味を持って来てくれる人を増やさなければ、やがて衰退して滅び去るでしょう。

その事を想像出来ない、ウォルターのような画商が日本には、まだウヨウヨしています。

アートの世界からは差別されても、私には応援してくださるコレクター様や読者、視聴者の皆様のおかげで描き続けられます。

ホント毎日描ける幸せを感じております。

業界からはある程度距離を置きながら、独自で作品やアートの裾野を広めて行きたいと思います。。。

マーガレット自身も今まで色々あったようで、今では画廊に頼る事なくプライベートギャラリーで作品を発表し続けていらっしゃいます。

マーガレット・キーンの作品や複製画などのアートプリントはサンフランシスコの彼女のプライベートギャラリーで購入できます。

オンラインショップもあるようですよ。。。☆
以上!動画では語れなかった映画紹介&アートの世界に今思う事。。。でした!

日本では顔の絵は怖いというイメージがありますが、この映画がきっかけで、ポートレートアートは実は深くて面白いって事が多くの皆様に伝わったら良いのにな〜って思っています。。。☆
以上初めての映画紹介動画でした!
皆様も是非映画『Big eyes』をご覧くださいね。。。☆

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